「旅に出なければならないのです」
オニサルビアの君は、重ねて言った。
もう何度も転移をしているが、他人を転移させたことはない。そもそも、転移を頼まれる事態など、想像もしたことがない。
どうやって転移が行われているのか、よくわからない。転移させてくれた人々は、どうしてそれが可能なのか。特別な能力があり、誰にでもできるわけではないように思っていたが、実際のところ、どうなのだろう。
旅をする者には、この肩の「鳥」のような通訳は必ず付くのだろうか。それもわからない。挽き肉を捏ねるような声をした美しい人には、何もいなかった。こちらから見えないだけだったのかもしれない。わからない。
旅をしているのに、旅のことがわかっていない。
「消えず見えずインクの旅券を持つ者、二名あり! この者共を然るべき儀式で送る者はおらぬか!」
青い鳥は、迷わず言った。まだ、この街を離れると決めたわけではないのだが、青い鳥がそう言うのなら、そうなのだ。