2019年4月3日水曜日

オニサルビアの館

「皆の衆、礼を言う!」
青い鳥は、ずいぶん立派そうに、大仰な挨拶をした。青い鳥に聞こえないように、そっと溜息をつく。

オニサルビアの君が「こちらへ」と手招きする。人々が付いて来てしまうのではないかと心配したが、大丈夫だった。
青い鳥が「皆の衆、ありがとう。佳い花を! 佳い鳥を!」と言い続けたからだ。絶妙なデクレッシェンドで音量を下げていき、ついに大通りから離れることができた。
青い鳥が、小さく疲れた声で「キュ」と鳴いたのがわかった。
大袈裟な言い回しは作戦なのか、青い鳥の元々なのか、分からなくなったが、感謝せねばなるまい。

オニサルビアの君の自宅に招かれた。ハーブが覆い茂るような家ではなく、簡素な、さっぱりとした小さな一軒家だった。ただ、乾燥したクラリセージだけはたくさん壁に吊り下げられていた。
「これは、もしかして……」
「そうです。ご覧になったように、この街の多くの人は、植物が肩から生えてしまうのです。その植物とともに生き、利用し、植物の香りに包まれて一生を過ごします」

振る舞われたのは、セージを香り付けに使った肉料理やハーブティーだった。肉は食用の形となってから他所から運ばれてくるものなので、この街の人々は動物をほとんど見たことがなく、興味も持たないのだという。それで青い鳥があのように恐れられたのだ。