激しい砂嵐が、漸く収まり、長く止めていた息を思いっきり吸い込んだ途端、激しく咽た。
これは、なんの匂いだ?! あたりを見回すが、新しい建物ばかりで、そんな匂いが漂ってきそうなものはない。人や動物もまだ見えない。
ああ、香辛料だ。
異国や異世界に来れば、多少なりとも匂いの違いを感じるものだが、ここはそれどころではない。匂いは強いが悪臭ではないのが幸いだ。それでも息苦しい。細くそっと息を吸う。
しばらくすると、この空気中の匂いは、もっと複雑であることが判ってきた。様々な香辛料や薬草や花の香りが混ざったような。
人通りの多い道に出た。そして、人々は肩から、見たことがありそうでなさそうな植物を生やしていた。
雪を降らす仙人掌。
涙を流し輝く鬱金香。
激しく開閉を繰り返す牡丹。
この街の複雑な匂いは、この人々によるものなのだろうか。
肩の青い鳥にも気軽に声を掛けていく。鳥のことを当然のように植物だと思うらしい。
「佳い花を」
どうやらそれがこの街の挨拶なのだった。