さて、どうしようか。
いくら匂いが強くてつらいとは言っても、すぐにどこか別の街に行くのも、なんとなく勿体ない。逃げられてしまって、まだ、誰とも交流していないのだ。
「青い鳥よ、どうしてくれようか……まあ、おまえさんが悪いわけではない。この街の人は「鳥」を知らなかっただけだ。花も鳥も、美しい。赤い鳥は、少し喧しかったけれど、美しかったし、おまえさんも本当に美しいよ。ちょっとないくらい綺麗な青い鳥だ」
「花と鳥は、元々は相性がいいはずなのだ。花は鳥に蜜をやる。鳥は花粉を運ぶ。そうやって互いに暮らしている花と鳥がいる。ここでは鳥は珍しいようだが、そういう世界もある」
「花鳥風月という言葉がある。美しい自然や景色のことだ。花と鳥と、風と月。ここでも花と鳥は仲良く並んでいる」
独り言なんて、あまりしたことがなかったが、青い鳥に言い聞かせるように、そして、建物の陰からこちらを伺っている人の存在を意識しながら、独り言にしては大きな声で、ゆっくり、なるべくゆっくり、鳥と花を称え続ける。
ふいに、青い鳥が何かに反応して身動いだ。それと同時に、ハーブの香り……セージだ。セージの匂いが近づいてきた。