2019年3月6日水曜日

砂漠の交代劇

空の色をした鳥と、肩に留まっていた赤い鳥は、鳥同士でなにやら囁きあっている。赤い鳥は人語の時と違って、美しい声だ。
すっかり取り残された気分で、ぼんやりと空と鳥を見ていた。鳥は、鶏を全部、青空にしたような鳥で、大きさは赤い鳥と同じくらいだった。空との境目がわからないくらい青空色で、砂漠によく似合う鳥だと思った。

消えず見えずインクの旅券を持つ旅のお方よ」
と、赤い鳥は急に人語で語りかけてきた。
消えず見えずインクの旅券を持つ旅のお方よ、吾の任務はこれにて終了する」
そう言って、ひょいと肩を降りた。入れ替わりに青い鳥が肩に乗った。まったく反論する暇もなかった。
「消えず見えずインクの旅券を持つ旅の者よ、次なる街へ同行致す」
青い鳥は存外、渋い声で言った。そして、砂漠中の砂が巻き上がったのではないかと思うほどの大風が吹いた。

何も見えず、息もできず、赤い鳥に礼も別れも告げられない。
赤い鳥は、勝手に付いてきたように思っていたが、振り返るとずいぶん助けられた。そして、相棒のように思い始めていたのだ。
だからこそ、交代なのかもしれない。誰かと親しくなったり、執着したりできる旅ではないのだ。
美しい人や、その家族の顔を思い浮かべながら、砂に巻かれていく。