「雨雲に乗ってみないか」
と誘われた。青い雨合羽と長靴を履いた男の子が訪ねてきたのだ。
「それは、危なくないのか? 雲から落っこちたり、雷に感電したり」
私は冗談のつもりで質問したが、男の子は「大丈夫だ。乗るんだな」と言って、同じような雨合羽と長靴を差し出した。
おれはそれを着て、男の子に付いて歩いた。
そんなに長く歩いたわけではないのに、すぐに知らぬ景色となり、いつのまにか雲の上に着いていた。雲の上というのはもっとフカフカしているのかと思っていたが、そんなことはなかった。
「よく来たな」
と、男の子の父親と名乗る人に歓迎された。
雲雲の合間から町を見下ろした。すっかり夜になっていた。
夜景は美しいが、どこか物悲しい。ここは見上げると、宇宙だ。
翌日も雨を降らすのを手伝い、男の子と遊んだ。
時折、地上が恋しくなるが、まだ当分帰らないつもりだ。