超短編
「申し訳ありません」と、火から下ろした鍋が呟いた。「え?」聞き返すと「申し訳ありません。火の通リが不十分で……」あら、それならもう一度、火にかけるから大丈夫、教えてくれてありがとう。鍋を火に戻すと「私が未熟なばっかりに」とまだぶつくさ言っているので、その日の煮物は黙って食べることにした。