鉄道で旅をするのは、随分久しぶりである。最後に鉄道に乗ったのはいつのことだったろう。思い出せない。
プラットホームからは線路は見えない。本当に列車が来るのかね?と荷物を預けたボーイに尋ねるが鬼の形相で答えない。
いや、形相が鬼のようなのではなく、彼は本当に鬼なのだった。
死ぬことになって銀河行きが決まったとき、妻や子どもたちは喜んだ。
目的の銀河は遠いのだよ、列車で何千年も掛かるのだよ、と説明したが
「一等車なんでしょう? 優雅でよいじゃありませんか」
と妻はにこやかに言った。励ましてくれたのかもしれない。
ようやく列車がホームに入ってきた。ボーイは親切に席まで案内してくれた。
走りだした。座席は思いのほか快適だった。食事もきちんと三食あるらしい。何も心配はいらない。
地球は、青い。長い旅が始まった。
祖父の命日を前に。