2012年8月2日木曜日

銀河鉄道に乗って

鉄道で旅をするのは、随分久しぶりである。最後に鉄道に乗ったのはいつのことだったろう。思い出せない。


プラットホームからは線路は見えない。本当に列車が来るのかね?と荷物を預けたボーイに尋ねるが鬼の形相で答えない。


いや、形相が鬼のようなのではなく、彼は本当に鬼なのだった。


死ぬことになって銀河行きが決まったとき、妻や子どもたちは喜んだ。


目的の銀河は遠いのだよ、列車で何千年も掛かるのだよ、と説明したが


「一等車なんでしょう? 優雅でよいじゃありませんか」


と妻はにこやかに言った。励ましてくれたのかもしれない。


ようやく列車がホームに入ってきた。ボーイは親切に席まで案内してくれた。


走りだした。座席は思いのほか快適だった。食事もきちんと三食あるらしい。何も心配はいらない。


地球は、青い。長い旅が始まった。



祖父の命日を前に。