2011年1月12日水曜日

見てきたようなことを云う人

「実際、おれは見てきたんだ。水星だよ。え? どうやって行ったかって? そりゃあ、孫が作った宇宙船に乗って行ったんだ。孫は、小学二年生だ。かわいいぞ。これが写真だ。名刺替わりだ。水星のおみやげもある。氷だ。溶けちまう前に、舐めるといい。飴玉のように」

見ず知らずの青年に、小さな氷が二つ入った瓶をもらった。
舐めると、甘い鉄の味がした。
もう一つはお月さまが舐めた。
「おい、水星に逢ったのか?」
事の顛末を話すと
「久しぶりに水星と逢いたいねえ。この子供を訪ねてみるとしよう。一緒に行くだろ、水星に」