紫は困っていた。
「わたしの耳はどうしちゃったのかしら。トランペットたちの声が聞こえない。」
大勢の楽団の、楽器ひとつひとつの声をちゃんと聞き分けられる耳を持っている。
だが、トランペットの声だけが透明になってしまった。
そう、透明なのだ。水晶のトランペットが三人、華やかで軽やかな主旋律を歌っているはずなのだ。
紫は、その小さな身体の、小さな鼓動の中に、紫水晶を育てなければならないことを、すっかり忘れている。
透明なトランペットの声が聞こえないのも、たぶん、それが原因だ。
2011年1月31日月曜日
2011年1月21日金曜日
2011年1月17日月曜日
2011年1月14日金曜日
AN INCIDENT AT A STREET CORNER
少年が、「これと同じもの、持っているでしょう?」とやってきた。
両手いっぱいに、大きな金平糖を抱えている。
「それ、どうしたんだい?」
「そこの角を通るたびに、頭に落ちてくるんだ。たんこぶだらけだ」
少年は、憎々しげに、部屋の奥を覗き込んだ。
どうやら、それがこの家の机にならんだ星のせいだ、と言いたいらしい。
星たちにはよくよく言って聞かせるから、と言いながら、星入りのココアをごちそうした。少年はココアに星を入れる様子を目をぱちくりさせながら見ていた。
ココアがとても美味しかったようで、少年の機嫌は直り、星は全部持って帰ると言う。「ぼくもココアを作る!」と。星は紙袋に入れて持たせることにした。
少年を送りがてら、角を曲がると本当に星がひとつ落ちてきた。
少年は素早くキャッチした。もう頭にたんこぶを作らない。
お知らせです。
第4回アソシエイト展inハウステンボス
テーマ:“~LOVERS~大切な人への贈り物”
会期:2011年2月9日(水)~23日(水)9:00~21:30
会場:パレスハウステンボス内 ハウステンボス美術館 展示室フロア
に、豆本を出品します。
ふくまめプロジェクトによる豆本コーナーに参加します。
両手いっぱいに、大きな金平糖を抱えている。
「それ、どうしたんだい?」
「そこの角を通るたびに、頭に落ちてくるんだ。たんこぶだらけだ」
少年は、憎々しげに、部屋の奥を覗き込んだ。
どうやら、それがこの家の机にならんだ星のせいだ、と言いたいらしい。
星たちにはよくよく言って聞かせるから、と言いながら、星入りのココアをごちそうした。少年はココアに星を入れる様子を目をぱちくりさせながら見ていた。
ココアがとても美味しかったようで、少年の機嫌は直り、星は全部持って帰ると言う。「ぼくもココアを作る!」と。星は紙袋に入れて持たせることにした。
少年を送りがてら、角を曲がると本当に星がひとつ落ちてきた。
少年は素早くキャッチした。もう頭にたんこぶを作らない。
お知らせです。
第4回アソシエイト展inハウステンボス
テーマ:“~LOVERS~大切な人への贈り物”
会期:2011年2月9日(水)~23日(水)9:00~21:30
会場:パレスハウステンボス内 ハウステンボス美術館 展示室フロア
に、豆本を出品します。
ふくまめプロジェクトによる豆本コーナーに参加します。
2011年1月12日水曜日
見てきたようなことを云う人
「実際、おれは見てきたんだ。水星だよ。え? どうやって行ったかって? そりゃあ、孫が作った宇宙船に乗って行ったんだ。孫は、小学二年生だ。かわいいぞ。これが写真だ。名刺替わりだ。水星のおみやげもある。氷だ。溶けちまう前に、舐めるといい。飴玉のように」
見ず知らずの青年に、小さな氷が二つ入った瓶をもらった。
舐めると、甘い鉄の味がした。
もう一つはお月さまが舐めた。
「おい、水星に逢ったのか?」
事の顛末を話すと
「久しぶりに水星と逢いたいねえ。この子供を訪ねてみるとしよう。一緒に行くだろ、水星に」
見ず知らずの青年に、小さな氷が二つ入った瓶をもらった。
舐めると、甘い鉄の味がした。
もう一つはお月さまが舐めた。
「おい、水星に逢ったのか?」
事の顛末を話すと
「久しぶりに水星と逢いたいねえ。この子供を訪ねてみるとしよう。一緒に行くだろ、水星に」
2011年1月11日火曜日
友だちがお月様に変った話
お月さまと一緒に歩いていると、向こうからお月様がやってきた。
「あれ?」
互いのドッペルゲンガーを見ているというのに、お月さまとお月様は平然としている。
「なぜ?」
二人を見て驚いているのに、二人は何も驚いていない。
困ったな、と思いながらお月さまとお月様に挟まれて歩いている。
しばらく話しているうちに、お月様はどうやら幼なじみのZ君であることが判明した。
「なんだか、ずいぶん雰囲気が変わったね」
「そうかい? 君こそ、お月さまにソックリでびっくりしたよ」
月が眩しくて見上げることができない。
「あれ?」
互いのドッペルゲンガーを見ているというのに、お月さまとお月様は平然としている。
「なぜ?」
二人を見て驚いているのに、二人は何も驚いていない。
困ったな、と思いながらお月さまとお月様に挟まれて歩いている。
しばらく話しているうちに、お月様はどうやら幼なじみのZ君であることが判明した。
「なんだか、ずいぶん雰囲気が変わったね」
「そうかい? 君こそ、お月さまにソックリでびっくりしたよ」
月が眩しくて見上げることができない。
2011年1月6日木曜日
THE BLACK COMET CLUB
「これが会員証。」
お月さまに手渡されたのは、吸い込まれそうな黒色をしたバッジだった。
「会員証? 何の?」
「もちろん、THE BLACK COMET CLUBのだ」
お月さまがエヘンと胸を張ると、バッジの中にホウキ星がひとつ、流れた。
「会員規約、第一条。本会員は、夜空を自由に駆け巡ること。第二条、本会員は、月及び、月と懇意であること。第三条、月と諍いを起こしたものは……」
お月さまが条例を読み上げるたびに、バッジに星が流れる。
お月さまに手渡されたのは、吸い込まれそうな黒色をしたバッジだった。
「会員証? 何の?」
「もちろん、THE BLACK COMET CLUBのだ」
お月さまがエヘンと胸を張ると、バッジの中にホウキ星がひとつ、流れた。
「会員規約、第一条。本会員は、夜空を自由に駆け巡ること。第二条、本会員は、月及び、月と懇意であること。第三条、月と諍いを起こしたものは……」
お月さまが条例を読み上げるたびに、バッジに星が流れる。
2011年1月5日水曜日
2011年1月3日月曜日
コーモリの家
コーモリの家を訪ねなければならない。
理由はよくわからないが、お月さまにそう言われたのだ。
「コーモリの家を見つけるのは大変だぞ」と地図を手渡された。
とても親切な地図で、見つけるに難儀するとは思えない。
指定された日時に地図を持って出かける。まだ明るいうちに。
その場所は、空き地になっており、草がボウボウに生えていた。
家と呼べそうなものは何もない。
空き地の中をうろうろと歩きまわるが、コーモリは出てこない。
「御免下さい、コーモリさんはご在宅ですか」
そう小さな声で言ったら、どこからともなく大勢のコーモリが現れて、あっという間に取り囲まれた。
美しい夕焼けが、一瞬にして闇となった。
「いらっしゃい。貴君がお月さまのお気に入りだねえ」
気がつくと、立派な応接間で、カイゼル髭の紳士と向き合っている。
あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願いいたします。
一日は、近所の富士塚に登りました。
スカイツリーが見えた。
理由はよくわからないが、お月さまにそう言われたのだ。
「コーモリの家を見つけるのは大変だぞ」と地図を手渡された。
とても親切な地図で、見つけるに難儀するとは思えない。
指定された日時に地図を持って出かける。まだ明るいうちに。
その場所は、空き地になっており、草がボウボウに生えていた。
家と呼べそうなものは何もない。
空き地の中をうろうろと歩きまわるが、コーモリは出てこない。
「御免下さい、コーモリさんはご在宅ですか」
そう小さな声で言ったら、どこからともなく大勢のコーモリが現れて、あっという間に取り囲まれた。
美しい夕焼けが、一瞬にして闇となった。
「いらっしゃい。貴君がお月さまのお気に入りだねえ」
気がつくと、立派な応接間で、カイゼル髭の紳士と向き合っている。
あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願いいたします。
一日は、近所の富士塚に登りました。
スカイツリーが見えた。
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