懸恋-keren-
超短編
2006年10月28日土曜日
至れり、尽くせり
家中、イタルトコロに苺がなるようになった。
本棚、炊飯器、蛍光灯、時計……。
私は見つけた苺をもいで、その場で食べた。便器になった苺も構わず食べた。苺が好物なのだ。しあわせだった。
だが苺は一か月もすると数が激減した。数日に一個食べられればいいほうだ。
あんなに毎日たくさんなっていた苺だのに。何がいけないのだろう?気温?肥料?
そもそも根も葉も無いのに突然実を付け始めた苺だ、何もわからないのだ。
それでも私はいてもたってもいられず、園芸用品店で大量の肥料を買ってきて、家中に撒きはじめた。
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