懸恋-keren-
超短編
2006年10月10日火曜日
別れの日の記憶
「このセロリ、スジが残るな」
と言ってあなたが残したセロリの繊維は、薬指に結び付けた。
セロリと血の通わない薬指は次第に黒ずんでいったけれど、セロリの匂いはますます濃厚に、鮮烈に漂った。
何日かしてセロリは指からなくなったけれども
あなたが去ったあの日あの時あの瞬間の匂いは、しっかりと薬指に染み込んだ。
次の投稿
前の投稿
ホーム