懸恋-keren-
超短編
2002年10月24日木曜日
ハーモニカが盗まれた話
ポケットに入っているハーモニカがなくなった時は、神業だと思ったよ。
何しろポケットに手を入れて歩いていたオレはハーモニカを握ったままだったのだから。
握っていた物が突然なくなれば誰だって気が付く。
「やいやい。たいしたスリがいるもんだ」
そう毒付くと前方でピカリ、猫の目が光るのが見えた。
その夜、言うまでもなく下手クソなハーモニカは一晩中途絶えることがなかった。
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