懸恋-keren-
超短編
2002年10月21日月曜日
月から出た人
ときどき独りで飲みに来る男、に気付いたのは『スターダスト』に通うようになって数か月経ってからのことだった。
静かな光を纏った、と言いたくなるような独特な雰囲気があり、しばしば見惚れてしまうのだった。
「いつもお独りですね?」
そう声を掛けると意外にも人懐こい笑顔が返ってきた。
我々は店を出て、秋の夜風にあたりながらゆっくりと歩いた。
「お住まいはどちらで?」
そう尋ねると男はゆっくりと十六夜の空を指差した。
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