超短編
箸やフォークが当たると音楽が鳴るように、 世界中の丸くて平たい皿にこっそりと細い溝を切りたい。(46字)
唐草文様を指でなぞっていたら、いつの間にか本当に蔓草がそこらじゅうを這い回っているから、蔓の根本を探す旅に出たい。(57字)
ラムネ瓶のビー玉になって、どこかの子供に飲み干された後は、淡い青緑に歪んだ世界を只管黙って眺めていたい。(52字)
秋になったら広大なススキ野原に行って、一晩掛け、穂を束ねて結わいて、木莵だらけにしたい。(44字)
恋仲になった書家が送って寄越す手紙から流麗に立ち上る文字と、夜な夜なしとどに戯れたい。(43字)
幽閉されているビスケット城の塔で、牛乳を垂らしながら城を崩し食べ、崩し食べ、食べ飽きた頃に脱走したい。(51字)
冬の夜、白猫のやわらかな胸毛に潜り、一晩眠ったあと出立式をし、尻尾の先で鰯印の旗を振りたい。(46字)