2003年1月18日土曜日

フクロトンボ

あの行き止まりは本当に行き止まりなんだ。気をつけな。
ウサギはそう言ってたけど私は信じていなかった。
だが、それは本当だった。
あのフクロトンボに入ったら、人生は止まる。
私の知り合いで迷い込んだ人がいたのだ。
彼はそれきりだった。
ちょっと覗いてみたくなるけど、それはやめておいた方がいい。
ウサギだってたまには本当の事を教えてくれる。

2003年1月17日金曜日

思ひ出

昨晩、私は雪世界に迷い込んだ。暗くて寒い夜だった。
全身疲労し、一面の雪景色に方角もわからなくなっていた。
私は天に祈った。せめて月明かりを!
願いは通じた。
立ちこめていた雲は去り、新月間近の細い月が見る見るうちに逆戻りし、明るい満月になった。
私はしばし呆然としていたが、気を取り直して歩きだした。
月が明るい内に家に戻らなければ!
だが、心配は無用だった。
私が家に着き、礼を言うのを待ってから、月は静かに痩せていった……

屋根裏から出てきた祖父のノートを見せるとお月さまは少し驚き、多いに照れた。

2003年1月16日木曜日

辻強盗

その十字路を曲がるとある物をなくす、という事件が頻繁に起こった。
人々はそれを辻強盗と呼んだ。
強盗と言っても、なくなるのは金目の物ではない。
だが、それ以上になくしては困るものだった。
その十字路を曲がった物は自分の名前を忘れるのだ。
呼び掛けられてもわからない。家族が教え込んでも無駄だった。
それは三日という短い間だったが、日常生活もままならなかった。
月は問い詰めた。「なぜこんなことをするんだ?」
流星は答える。
「冥土の土産にもってこいなのさ」
月は何も言えない。
流星の言葉はいつも謎だらけだ。

2003年1月15日水曜日

THE GIANT-BIRD

巨大な鳥が我が家を訪ねてきたのは日曜の午後だった。
家にはとても入らないので庭で話をした。
普段雑草だらけで手に余る庭に初めて感謝した。
巨大な鳥は、ここに来るまでに人を呼んでしまったらしく、外は野次馬だらけになっていた。
鳥はそれを気にして何度も「相済みません」とペコペコした。
巨大な鳥の用件は大したことではなかった。
だが、それは大仕事だし、すべてが済むには時間もかかる。
そして少しばかり気の毒だった。
だが断るわけにはいかない。
「わかりました」

2003年1月13日月曜日

停電の原因

史上最大の停電はきっかり24時間48分続いた。
正確に分かっているのは、停電を起こした張本人に問いただしたからで停電の間、時計と睨めっこしていたからではない。
さて、犯人の言い分はこうだ。
「私だってたまには休みたい。百年に一度なんだから見逃してくれてもいいではないか。人間のケチ」
この証言の真偽を確かめるため、至急天文記録が調べられた。
だが、それはたいして意味のない仕事だった。
百年前、地球上に電気は普及しておらず、月のサボりを誰も気付かなかったのだ。
未来人諸君、百年後の日付は(絶筆)

2003年1月12日日曜日

A MOONSHINE

「ふと見上げた月に魅せられて月に向かって歩き出した人がいた。その人はそのまま月を追い掛けて世界一周してしまったんだってさ。そんなに昔の話じゃないんだ、ついこの間のことさ」

2003年1月11日土曜日

どうして彼は喫煙家になったか?

お月さまは時々煙草を吸う。
煙草を吸う時のお月さまの表情は、なんだかはかなげで気になっていた。
「お月さまはどうして煙草を吸うようになったのですか?」
「はじめは憧れでした。
でも本格的に吸い始めた理由は他にあります」
「それはどういうことですか?」
「ここに来るには、この煙草が必要なのですよ」
お月さまはそれ以上語らなかった。