超短編
その人はいつも同じ巾着袋を持っている。巾着袋は何が入っているのか、いつも膨らんでいて、妙に重たそうだった。何が入っているのか気になるが、人の荷物を詮索するのも憚られ、聞いたことはなかった。今日は、その巾着袋が萎んでいる。本人も元気がないように見える。思わず口を開く。「何が入っているんですか?」 紐が緩み、開いた袋から見えたのは、完全な闇だった。吸い込まれると気づいた時には、もう闇の中。