超短編
馬の世話は経験がそれなりにあるがこんな馬はいなかった。絶対に顔を正面から見せない。目や歯も検めたいが、ままならない。まともに顔を見ないまま旅立ちの時がやってきた。馬がこちらを見る。初めて目が合う。鼻先を撫でる。歌声のような美しい嘶き。