馬の世話は経験がそれなりにあるがこんな馬はいなかった。絶対に顔を正面から見せない。目や歯も検めたいが、ままならない。まともに顔を見ないまま旅立ちの時がやってきた。馬がこちらを見る。初めて目が合う。鼻先を撫でる。歌声のような美しい嘶き。
2021年11月30日火曜日
2021年11月29日月曜日
地下一階 #ノベルバー day29
2021年11月28日日曜日
隙間 #ノベルバー day28
横着で名高い人はドアを開けるのも億劫で、閉め忘れたドア、閉まりかけのドアからスルリと出入りする。隙間すり抜けの技術の向上が極まり、ついに閉まったドアからも出入りするようになった。盗人扱いされ、常に監視される身分になったが、横着は治らない。
2021年11月27日土曜日
ほろほろ #ノベルバー day27
「ほろほろ、ほろほろ」流暢に話しているつもりだったがそれしか言えなかった。鳩とは言葉が通じて一日中鳩と遊んでいた。今は「ほろほろ」以外にも話せるようになったけれど、友達は鳩のほうが多い。最近は異国の鳩とも交流すべく「ホロホロ」を練習中。
2021年11月26日金曜日
対価 #ノベルバー day26
2021年11月25日木曜日
ステッキ #ノベルバー day25
老人から「ステッキが勝手に伸び縮みして困っている」と相談を受けた。ステッキの言い分は「私は歩行補助用の杖ではない」 そこでスキップを勧めると、老人は「足が痛いのに」と当初は嫌がっていたが、今ではすっかりスキップに慣れたようだ。
2021年11月24日水曜日
月虹 #ノベルバー day24
「月虹を潜ってやってきたものは、虹を渡って帰る」という札を付けてやってきた大量の異星人は手のひらに乗るほど小さく、毛深くて、よく食べ、人懐っこい。この島では月虹は珍しいものではないが、こんな地球外生物を召喚したのは初めてだ。
2021年11月23日火曜日
レシピ #ノベルバー day23
2021年11月22日月曜日
2021年11月21日日曜日
缶詰 #ノベルバー day21
2021年11月20日土曜日
祭りのあと #ノベルバー day20
2021年11月19日金曜日
クリーニング屋 #ノベルバー day19
2021年11月18日木曜日
旬 #ノベルバー day18
2021年11月17日水曜日
流星群 #ノベルバー day17
流星の中にもあまり人込みを好まぬものもいるのだ。行列になったり群衆になったりは煩わしい、できればひとりで宇宙空間を走りたい、と。今夜の流星群は、そんな孤独を好む流星ばかりで構成されている。どうなることやら。答えは天体観測で。
2021年11月16日火曜日
2021年11月15日月曜日
おやつ #ノベルバー day15
2021年11月14日日曜日
裏腹 #ノベルバー day14
「ドーナツを食べた後に腹を裏返すと、ドーナツの穴に落ちるから気をつけたほうがいいぞ」と言われたので、「マカロニを食べる時には腹の裏側に隠れないと竹輪に嫉妬されるぞ」と言っておいた。
2021年11月13日土曜日
うろこ雲 #ノベルバー day13
うろこ雲のうろこを並べる仕事をするんだと言っていた高校時代の友人を馬鹿にしたことは一生の不覚であった。私はいま、うろこ雲のうろこを剥がして集めて炙る仕事をしている。鱗雲酒は、鰭酒より美味いぞ。
2021年11月12日金曜日
2021年11月11日木曜日
2021年11月10日水曜日
水中花 #ノベルバー day10
埃まみれのそれが水中花だと気づいたのは無口な兄だった。水に沈めてみろと身振りで言う。汚れかと思った赤っぽい部分は花だった。花が開くにつれて水が濁る。埃を掃ってからにすればよかったが、鮮やか過ぎる赤い花を見ずに済んだのは幸いだった。