かなり迷ったが、背の高い若者を信用してみることにした。
他に声を掛けてくれる人は現れそうになかったし、この触感の混乱が体力を著しく奪う予感があったからだ。
「父が薬を処方できます。一緒に家に来られますか?」
「お父上は……」
「父は医者で、これまでも多くの旅の人に薬を出しています。もちろん消えず見えずインクの人にも。心配しないで大丈夫です。法外なお金を取ることもしません」
若者は、こちらの心配事についてすべて説明してくれた。まっすぐにこちらを見て、そして少し微笑んで。
「立てますか? 腕につかまってください。気を付けて、少し痛い感触がします」
まだ幼さの気配が残る若者の身体に掴まると、たしかにトゲトゲした感触があった。だが、先に言ってもらったおかげか、安心感か、それほどの衝撃もなく立ち上がることができた。
若者は、実に有能は案内人だった。舗装が変わるところ、階段、階段の手すり。すべて感触を先に教えてくれた。少し予想と覚悟ができれば、それだけで衝撃が和らいだ。
その間に、青い鳥と若者の天道虫はずいぶん仲良くなっていた。青い鳥の胸に留まった天道虫は、立派なバッジのように輝いている。