「消えず見えずインクの旅券を持つ者を然るべき儀式で送る者はおらぬか!」
立派な身形の人が朝食の準備をしたり、身支度を手伝ってくれている間も青い鳥は叫び続けた。
「煩くて、申し訳ない」
「いいんですよ。この鳥は役目をきっちり果たすよい鳥ではありませんか」
そして、また立派な身形の人の旅の思い出を訊いた。
「途中で交代したんです、赤い鳥から青い鳥に。この鳥のような、旅の供はいましたか?」
「もちろん、居ましたよ。こんなに大きくはなかったし、口数は少なかったけれど」
と言って、壁の絵画を指差した。栗鼠の絵だ。可愛らしくも自信に満ちた顔をしていた。
「文字を読み書きする栗鼠でした。同じように、何度か代替わりしました。絵は最後の栗鼠です」
やはり通訳のような役割をしていたらしい。立派な尻尾を筆のようにして文字を書き、言葉や文字の違う街の人々との交流を助けてくれたという。
「栗鼠は、罪の重い者に与えられたようです」
それはそうだろう。
「さて、そろそろお別れですね。転移できる場所までご案内します。少し遠いですが、最後にこの街を見ながら歩きましょう。そして……少し覚悟しなければなりません」