街には、大小の噴水が多くあった。大小の水の球が美しく整列しながら、噴き上がり、飛び跳ね、落下していく。見事なものだ。どのような技術と調整なのだろう。きっとこの街の技術者や職人ならではの知恵や経験があるに違いない。
噴水には、それぞれ名前が付いているのだと立派な身形の人が教えてくれた。「夏の夕陽と兎の涙」とか「午後二時における虹の発生」とか、そんな名前だ。どのような理由や由来でそんな名前が付いたのかを想像するのは、とても愉快だった。
「さあ。もうすぐ、着きます」
少し硬い声で、立派な身形の人は言った。
前方に、赤い箱が立っているのが見えた瞬間、心臓が飛び跳ねた。
この街でも、ポストは、赤い、のか。