言われてみれば、この身形のよい人は、罪が似合う。
「旅を終えたのはいつですか?」
「ここに腰を落ち着けて、十二年くらいになります」
小さな机に目をやる。よく磨かれた風合いのよい机だ。
「よい街に出会ったら、そこに住みたいとは思いますが……ひとところに落ち着いたら、また同じ罪を犯してしまいそうなのです」
「親や恋人がいたら、誘惑に駆られるかもしれませんが、年をとり、もうそんな親しい相手はいませんから」
立派な身形の人は、そう言って微笑んだけれど、親しい相手がいなくなれば罪を犯さずに済むだろうか。そんな自信はない。
その後も、立派な身形の人は、罪の重さや旅の思い出をたくさん話してくれた。罪は重く、旅の当初は強制的な転移を繰り返したそうだ。旅も長く、最低でも四年は旅をしなければならず、結局、五年に及んだという。
立派な身形の人は、数日間、泊めてくれた。毎晩、球体の湯の張った風呂に浸かり、ここまでの旅で疲れた身体と頭をほぐした。
四日目の朝、青い鳥の声で目が覚めた。
「消えず見えずインクの旅券を持つ者を然るべき儀式で送る者はおらぬか!」
まだまだ知らない街がある。