立派な身形の人は、想像通り、家も立派だった。
風呂を借りると、ビーズのような細かな球体の湯が溜まった湯船と、大きな穴のシャワーがあった。
恐る恐る湯船に浸かる。身体に触れたところからビーズの湯は液体に変わっていく。
ぐるぐると手足を動かしてみたが、全部が湯にはならなかった。どうしてもビーズの部分が残るのだ。
温かいビーズに埋もれているようであり、ゼリーに沈んだようであり、しばらく眼をつぶっていると、普通の湯に浸かっているのと変わらない気分にもなった。
シャワーは、湯船以上に不思議な体験だった。細かな球体の湯が降ってくるが、身体に触れた瞬間液体になり、流れていく。霰を浴びればさぞかし痛いだろうが、この街の球体の水は、痛くはない。
液体の湯と球体の湯がいまいち混ざりあわないまま、排水口に吸い込まれていく。流れる速度が異なるせいだろうと思うのだが、液体の湯と球体の湯は互いに少し遠慮しているようにも見えた。
不思議な風呂で、すっかり長くなってしまった。恐縮しながら出ると、立派な身形の人が笑顔で待っていた。
「温まりましたか? ああ、よかった。顔色もよくなった」