懸恋-keren-
超短編
2015年12月10日木曜日
姫君の物思い
旅から帰ったかぼちゃの姫君は、冬のことが忘れられずにいた。栗鼠ともキノコとも遊ぶことが出来ない代わりに、物思いに耽る時間はたっぷりある。
白い息をほうっと吐く。息が白いのも、クリスマスが静かなのも、森の霜が美しいのも、冬に包まれているから。
冬が愛おしいのは、冬が生まれるのを見てしまったからだろうか。こんなに寒いのに、まだまだ春は先なのに、春が来るのがなんだか怖い。
イラストレーション:へいじ
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