懸恋-keren-
超短編
2015年12月7日月曜日
十二月七日 笛吹き男
男が吹いている縦笛は、どうみても「枝、そのまま」の状態で、見ようによっちゃ枝を咥えた変な人である。おまけにメロディーを奏でるわけでもなく「ボウー、ボ、ボーー」と鳴らしているだけだから、よしんば枝にしか見えない笛でなく、ちゃんとリコーダーに見える笛だったとしても、やっぱり変な人である。
男は笛を吹きながら池の周りをゆっくり歩く、男の後ろをついて歩く大量の者たちがいるのだが、いかんせん蟻なので、誰も彼が立派な笛吹き男だとは気が付かず、やっぱり変な人である。
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