超短編
ずいぶん、蛙をよく見る一日だ。
駅のホーム、ラーメン屋の行列、喫茶店に飾ってある絵画……みんな蛙だった。
神社の狛犬、レンタルショップの映画、スーパーの時報……ぜんぶ蛙だった。
妖術使いがいるに違いない、と気をつけていたけれど、結局妖術使いには出遭わないまま家に帰った。
風呂にはいると、足の爪が、ガマガエル色のペディキュアで染まっていた。
太田記念美術館の江戸妖怪大図鑑、全三部コンプリート。