僕のポケットには炭酸弾が入ってる。右に二ツ、左に1ツ。
「憎たらしい奴にあったら、コイツを投げつければいい。シュワシュワと消えちまうよ」
と、父ちゃんがくれた。
けれど、僕はどんなに嫌な奴に出会っても、炭酸弾を使うことができない。
父ちゃんの発明品はいつだって正反対の効果を発揮するから。
だからこれは、大好きな人に使おうと思う。実際、父ちゃんは母ちゃんに炭酸弾を投げつけているのを僕は見た。
それ以来、父ちゃんと母ちゃんは気持ち悪いほど仲がいい。
炭酸弾を使う日が来るのは、いつになるかわからない。
けれど、それまでずっとポケットの中でそっと弄び続けるんだろう。