待ち合わせにやってきた彼女はもうヘトヘトの様子だった。
「ふう」と息を吐き、ドシンと鞄を置いた。
高級ブランドのロゴが入った見るからに重たそうな鞄は、CDプレーヤー内蔵なのだという。
今時、CDプレーヤーを持ち歩くなんて。
「リサイクルショップで見つけた掘り出し物なの。ネットで探すと高値が付いているヴィンテージ物。前から狙っていたんだ」
嬉しそうな顔の彼女に、「よかったわね」と無理やり笑ってみせた。
「重たいのはCDプレーヤーのせいではないの」
彼女は誇らしげに鞄を開いて見せる。
「バッテリーがね、ちょっと重たいの。仕方ないけれどね、ヴィンテージってそういう物だし」
大袈裟な配線から外して見せたのは、ガラス容器に入った味噌だった。
「えっと……蓄電がなくなったらどうするの?」
結婚三年目の彼女は当たり前のように答える。
「お味噌汁を作るに決まっているでしょ?」