2013年1月26日土曜日

夢 第十六夜

待ち合わせにやってきた彼女はもうヘトヘトの様子だった。

「ふう」と息を吐き、ドシンと鞄を置いた。

高級ブランドのロゴが入った見るからに重たそうな鞄は、CDプレーヤー内蔵なのだという。

今時、CDプレーヤーを持ち歩くなんて。

「リサイクルショップで見つけた掘り出し物なの。ネットで探すと高値が付いているヴィンテージ物。前から狙っていたんだ」

嬉しそうな顔の彼女に、「よかったわね」と無理やり笑ってみせた。

「重たいのはCDプレーヤーのせいではないの」

彼女は誇らしげに鞄を開いて見せる。

「バッテリーがね、ちょっと重たいの。仕方ないけれどね、ヴィンテージってそういう物だし」

大袈裟な配線から外して見せたのは、ガラス容器に入った味噌だった。

「えっと……蓄電がなくなったらどうするの?」

結婚三年目の彼女は当たり前のように答える。

「お味噌汁を作るに決まっているでしょ?」