2013年1月21日月曜日

雪の予報

天気予報を見た息子は、いそいそと支度を始めた。雪を降らせにいくのだ。

息子にそんな役割があることを知ったのは、彼が六歳になった冬のことだ。

夕方のニュースの天気予報で「夜遅くから雪」と伝えられると、「行かなくちゃ」と言った。

息子は「お母さん、あのね、僕は雪を降らせに行かなくちゃいけないんだ」

私はよくわからなくて「そんな遅い時間に出かけてはいけない」とか「せめてお父さんと一緒に行きなさい」などと叱ったりなだめたりしたけれども、初めて見る息子の真剣さと、大人びた眼差しに折れて、最後は「寒くないようにしなさい」とだけ言って送り出した。

小さい時から気象情報に関心が強いことは気がついていたが、そんなことになるとは思いもしなかった。

雪を降らせるってどういうことだろう。空に飛んでいくのだろうか。雪を作る機械を動かすのだろうか。

私は色々と考えながら息子が帰ってくるのを待った。仕事を終えた息子は、充実した顔をして戻ってきた。

「危ないことはなかった?」「寒くなかった?」と訊くと「大丈夫」と応え、すぐに寝てしまった。

それ以来、毎年冬に数回、出かけていく。ここが雪国でなくてよかった、と呟く。

雪が降る度にひとつ大人になる息子を見ると、誇らしく、少しさびしく思う。