ひどい不眠症の少年は、夜の森へ出掛ける。
「やあ」
「ホホウ」
梟の返事は、そっけない。だが、少年はそれを聞いて不思議と安心する。
「そっちへ行ってもいいかな」
「ホホウ」
少年はするすると木に登り、梟の隣に腰掛ける。
梟は大きい。森の住人の話をまとめると、この森の長老なのだそうだ。
少年は梟に凭れかかり、スヤスヤと寝息を立て始める。
梟は、しばらくそれを聞いたあと、おもむろに首をぐるりと回す。
静かだ。それから少年を咥えて、羽を目一杯広げると、雲に向かって飛び立つ。
少年はもう、ベッドで眠れぬ夜を過ごさなくてもよい。