2011年3月17日木曜日

黒い箱

「キミにプレゼントがある」
と、小さな黒い箱をお月さまに手渡された。
「開けてもいいんですか?」
「箱と呼ぶものがすべて『開く』とは限らない」
確かに、この箱は、継ぎ目のまるでない、真っ黒な立方体だった。
だけれども、中でカランと音がする。
「何が入っているんですか?」
「さてね。今度の新月が過ぎればわかるよ」

その「今度の新月」は、お月さまの家に招待されるそうだ。
家? そういえば、お月さまに家があるとは知らなかった。
いつも月に帰っていたから。

「一千一秒物語」のタイトルも残り10個を切りました。
なんだか終わりに向けて、勝手に動き出していますが、自分でもどうなるのかわかりません。プロットのようなものは、何もありません。

今までも、連作の体になっているものはありましたが、どうも今回の書き味は違っているのです。
たとえば、前回の「四千四秒物語」のときは、キャラクターが生き生きと動いてくれました。
今でも彼らは私の中でちゃんと生きていて、いつでも書けます。

今回は、ピンホールで向こう側を覗くように、書いている間だけ、ほんのちょっと覗き見る感じです。
一編を書き始める前も、書き終わった後も、すっと暗くなってしまいます。
でも、覗けばすっとピントが合うのです。

あと、今回は一人称で書きつつ「僕」や「私」を使わずに書いてきました。これは自分への課題で。それが達成したから何になるとかはないけれど。