生まれて初めてもらった「プレゼント」には黄緑のリボンが掛けてあった。
赤ん坊はそれが大層気に入ったので、いつも口に咥え、手にからげ、決して離さなかった。
かつて赤ん坊だった子供は、それを髪の毛に毎日結びつけていた。
乱暴な男の子に「キタネエ」と引っぱられ奪われると、大変な剣幕で怒り、殴りかかり、取り返した。
かつて子供だった大人は、仕事を始めるようになっても相変わらずお下げ髪に色褪せ垢じみたリボンをつけていた。「もっと清潔なリボンにすればよいのに。僕が買ってあげるから」と言い寄った男の手をうっとおしそうに払いのけ、鏡でいそいそとお下げ髪を直した。
かつて大人だった老人は、もう寝たきりだ。最後の力を振り絞って医者に頼む。
「黄緑のリボンで私を絞め殺して」
けれど、医者は黄緑のリボンを見つけることができない。老人の髪の毛には、ボロボロにほつれた灰色の紐がぶら下がっているだけ。