2010年3月30日火曜日

痛薬

毎日一回、寝る前に。
パパが飲めと言う薬は、真っ赤なカプセルで、どうしてそれを飲まなくちゃいけないのかわからない。だって、それを飲むと酷く身体が痛むから。
「時には痛みも必要だ」とパパが言う。
薬って痛みを和らげるものじゃないの? と言う私の問いかけに、パパは答える。もう十分痛い。引き裂かれてるのに。
赤いカプセルを飲むのを拒むことはできない。手足が動かないから。違う。赤いカプセルがおいしいから。

家族旅行に行ったので、その時にとった写真を
花の写真は、はなまちどり
猫の写真は、名前はまだないネコサイト
他の写真は、ブログ
にアップしました。

2010年3月26日金曜日

黄緑のリボン

生まれて初めてもらった「プレゼント」には黄緑のリボンが掛けてあった。
赤ん坊はそれが大層気に入ったので、いつも口に咥え、手にからげ、決して離さなかった。

かつて赤ん坊だった子供は、それを髪の毛に毎日結びつけていた。
乱暴な男の子に「キタネエ」と引っぱられ奪われると、大変な剣幕で怒り、殴りかかり、取り返した。

かつて子供だった大人は、仕事を始めるようになっても相変わらずお下げ髪に色褪せ垢じみたリボンをつけていた。「もっと清潔なリボンにすればよいのに。僕が買ってあげるから」と言い寄った男の手をうっとおしそうに払いのけ、鏡でいそいそとお下げ髪を直した。

かつて大人だった老人は、もう寝たきりだ。最後の力を振り絞って医者に頼む。
「黄緑のリボンで私を絞め殺して」
けれど、医者は黄緑のリボンを見つけることができない。老人の髪の毛には、ボロボロにほつれた灰色の紐がぶら下がっているだけ。

2010年3月23日火曜日

間違い街角

町工場に向かう途中、曲がる街角を間違ったので、元来た道を引き換えしたらまた曲がる街角を間違える。
その度に、真知子さんとまったりしたり、街並みが変わったり、待ちぼうけを食らったり、待合室を探したりするから、まぁあながち間違いではないのかもしれない。まさかね。

いさやん
あきよさん
三里さん

2010年3月20日土曜日

しっぽ

 大事なしっぽが行方不明になった。どうにも落ち着かない。
 風呂場にもない。
 食器棚にもない。
 テレビの裏、抽き出しの中も見た。しっぽだけに、おしりがそわそわする。
 外へ出た。駅までの道を注意深く歩く。
 植え込みに手を突っ込む。やや、この感触は! ……なんだ、野良猫か。
 とうとう駅に着いてしまった。電車に乗り込む。車窓からしっぽを探す。他の乗客も、真剣な目付きで外を眺めている。皆、しっぽが行方不明なのだろうか。同情する。
 線路沿いの看板すべてに、しっぽが取り付いている。どれが私の大事なしっぽなのか、とんと見分けが付かぬまま、最果ての地に辿り着いた。

********************
500文字の心臓 第93回タイトル競作投稿作
×1

見えた光景3枚を張り付けただけという……(笑)。
たぶん『いとしのロベルタ』佐々木マキ の影響がある。
深読みすると(そこまで深読みしなくても)エロい絵本です。(でも子供用)

砂場さんと両想いだった~。
二年生!二年生!(?)

2010年3月18日木曜日

献血

新しい腕時計が馴染まない。誕生日に貰った腕時計だ。
いくら調節してもきつく、左腕が次第に重くなってくる。
家に帰り、腕時計を外した瞬間に深い溜息が出た。
八重歯が印象的な女の顔を思う。誕生日プレゼントなど貰う義理などない相手だ。何故、こんな高価なものをくれたのかわからない。
痛む左手首を擦りながら、気が付いた。歯形が付いている。プレゼントをやっていたのは俺のほうだったようだ。

うーん、時計である意味が薄いな。まぁいいや。時々吸血ものを書いている気かする。いくつあるんだろう。

さて。本日、懸恋は…(数え中)…たぶん8歳になりました。びっくりびっくり。
相変わらず向上心が欠落しておりますが、ともかく呑気に書き続けようと思っております。

私も歳を重ねました。そろそろ己の醜さをぽへぇーと観察したいです。

2010年3月16日火曜日

腹時計

何を思ったか、飼い犬が目覚まし時計を飲み込んでしまった。
お腹を壊すだろうと思ったが、そんな気配はまるでない。獣医は笑って「ここに時計があります」とレントゲン写真を指差し、「きちんと動いていますよ」と聴診器でチクタクを聞かせるのだった。
我が家のたった一つの目覚まし時計をお前は飲み込んでしまったのだ、明日から俺はどうやって起きればいいんだと、懇々と説教を垂れてみたが、飼い犬は尻尾を振ってご機嫌だ。
俺はふて寝し、目覚めたのは、いつもの起床時間だった。飼い犬の腹の中で、目覚ましが鳴ったのだ。
俺は飼い犬に目覚ましを止めるよう頼んだが、飼い犬は機嫌よく尻尾を振るだけ。思わず頭をペシッとやったら、目覚ましは鳴り止んだ。

無題

紙吹雪と桜吹雪を戦わせるか。

2010年3月15日月曜日

踏切にて

僕の家の近くには、踏切がある。本当に小さな路線だから、電車が通ることは少ない。
僕は、毎日踏切で遊ぶ。
遮断機が居眠りするからだ。(遮断機も警報器も僕のおじいちゃんより古い)
警報器が弱々しく鳴り始めると、僕は遮断機を叩き起こす。すると、遮断機は震えながらゆっくりと降りてくる。
僕は運転士さんと車掌さんに手を振る。

あきよさん
三里さん

2010年3月9日火曜日

空中花

赤ちゃんが泣いている。
おじいさんが、ひょいと飛び上がって、何かを掴む。
もう一回、おじいさんは、ひょいと飛び上がった。

あ、空中花だ。
おじいさんは、宙に漂う花を捕まえたのだ。
見たことはあるけれど、触れる人は初めてだ。
空中花は、そこら中にあるものだけど、誰もが見えるわけではない。僕も時々見えるだけだ。
おじいさんが手にした空中花は、みるみるくっきりしていく。
泣いている赤ちゃんには黄色い花を。
赤ちゃんをあやすお母さんには赤い花を。
おじいさんは二人に空中花を渡すと、スキップしながら去っていった。
花の香りを残して。

あきよさん
いさやん
砂場しゃん
三里さん

2010年3月5日金曜日

不響輪音

知恵の輪が、それぞれ好き勝手な歌を歌っている。はやく解かなくちゃ!

↑短い話にする予定じゃなかったのだが……。
あきよさん
いさやん
砂場しゃん
三里さん


マンスリーとーぶに赤井都さんの記事。がちゃぽんの話題も。
東向島珈琲店で豆本がちゃぽん稼働中です。
これはうれしい記事だ。