いつからか、君は水槽で暮らすようになった。大勢の熱帯魚が暮らしていた水槽に断りなく入り込み、繊細な熱帯魚たちは、たちまち一人残らず死んでしまった。
相変わらず君は饒舌だけれど、水槽越しに聞く君の声はごぼごぼしていて、何を言っているのか、ちっともわからない。
君は水槽の硝子に手を付けてこちらを見つめ、口付けようとする。はじめのうちは応えようとしたけれど、硝子越しの接吻には何の意味もないと気付いてからは、やめた。
それでも、君は何事か訴えようとする。わからない。通じていないことをもどかしく思っているらしいことだけは、わかる。じゃあ、なぜ水槽の住人になったのと訊ねる。その答えもごぼごぼしていて理解できない。
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