2009年5月11日月曜日

龍、砂漠にて

龍はなぜだか世界を旅してみたくなったのだ。そして、よりによってサハラで迷ってしまった。
せめて水が、一滴でもあれば。だが龍は自力で動く力は残っていない。宝珠も耀きを失い、くすんでしまった。

今、龍は駱駝の背の上に乗せられている。二つのこぶの間に掛けられた龍はだらりと垂れ、干からびかけて小さくなっている。これでは、トカゲに笑われてしまうが、どうしようもない。
駱駝は黄色い歯を見せながら、オアシスに連れていってやるから心配するなと言った。
いつもは近い月がやけに遠くに見えるのを不思議に思いながら、龍は駱駝に揺られて砂漠を行く。

(260字)