「ぽっぽー!」
と言って、ぼくたちの船は誰にも見送られないまま出航した。
ぽっぽー、と叫んだのは博士だ。なぜならこの中古の船は警笛が壊れていて、鳴らそうとすると「鳩ぽっぽ」を歌いだすからだ。
出航の警笛が鳩ぽっぽでは格好がつかない、と博士は言うけれど、博士の声の警笛はもっと格好がついてなかったと思う。
ともかく、ものしり博士とぼくは海に出た。博士は港で遊ぶぼくを助手に任命した。
「私は世間でものしり博士と呼ばれているから、海の旅も困ることはない、任せなさい」
けれども、博士がものしりかどうか、ぼくは早くも疑っている。
だって博士は、面舵いっぱい! って言いながら左に進んでるもの。