コスモス畑できみを見失った。コスモスは僕の背丈よりずっと高く、見渡すことができない。
硬い茎を掻き分けながら歩きまわり、只管にきみの名を呼び続けたが、ぼくの声は全部コスモスの花が吸い取ってしまう。
諦めてしゃがみ込んだ。座ったまま見上げるとますますコスモスは高く、空は切れ切れにしか見えない。
きみとの距離が少し離れつつあることは気がついていたけれど、何もコスモスの中で失うことはないじゃないか。
独りごちると一斉にコスモスがこちらを向いたのがわかった。
ぼくはコスモスに潰されかかっている。ピンク一色かと思っていたコスモスは、よく見れば色とりどりだ。白もピンクも濃いピンクも。模様入りも、グラデーションも。
このまま潰されるのも悪くないかなと思いながら、目を閉じた。