高熱でうかれている父を寝かしつけるのは、ウサギの役になった。
「まったく、ホラ話ばかり聞かされて参ったよ」
とウサギが言うんだから、よほどうかれているのだ。
父にウサギの相手をしてもらったおかげで、ゆっくりできた。
2007年4月29日日曜日
2007年4月28日土曜日
四月二十八日 すべて親指のせい
今日は機械操作にことごとく失敗した。
DVDを焼くのに失敗し、パソコンはフリーズし、予約してあったテレビの録画ができていなかった。
「どうして!」
「そりゃ、あんたの右手の親指から青紫色の怪しい電波が出ているからにきまってるだろ。見えないのか?」
とウサギがしれっと言った。
今心配なのは、この日記がちゃんと送信できるかどうかだ。
DVDを焼くのに失敗し、パソコンはフリーズし、予約してあったテレビの録画ができていなかった。
「どうして!」
「そりゃ、あんたの右手の親指から青紫色の怪しい電波が出ているからにきまってるだろ。見えないのか?」
とウサギがしれっと言った。
今心配なのは、この日記がちゃんと送信できるかどうかだ。
2007年4月27日金曜日
2007年4月25日水曜日
四月二十五日 パン食い競争
おいしそうな菓子パンを二つ買って帰った。
ウキウキしながら帰って、食べようとしたら、二つとも半分くらいに減っている。しかも食い千切られたようにぼろぼろになっていた。
「やや。これは何ということだ!」
パン曰く「おいしそうだったから、共食いしてしまった」
減るとわかっていればもう一つ買ったのに。
ウキウキしながら帰って、食べようとしたら、二つとも半分くらいに減っている。しかも食い千切られたようにぼろぼろになっていた。
「やや。これは何ということだ!」
パン曰く「おいしそうだったから、共食いしてしまった」
減るとわかっていればもう一つ買ったのに。
2007年4月24日火曜日
2007年4月22日日曜日
四月二十二日 時計猫
新しい猫は、時間に厳しいに違いない。大きな時計の側にいつも立っている。
きっと朝起こしてくれたり、時間を知らせてくれたりするだろう。
そう期待していたけれど、猫は昼まで寝ていた。やっぱり猫だ。
きっと朝起こしてくれたり、時間を知らせてくれたりするだろう。
そう期待していたけれど、猫は昼まで寝ていた。やっぱり猫だ。
2007年4月21日土曜日
2007年4月20日金曜日
四月二十日 黄昏パンツ
商店街を、パンツが歩いていた。ピンクベージュのおばさんパンツ。パンツは新品だったけれども、割引シールを貼られ、その上に半額シールまで貼られ、ずいぶんくたびれていた。
まだ誰にも穿かれてないのに、二十回穿かれたパンツより、やつれていた。
パンツは疲れて旅に出たつもりなのだろう。
旅するパンツを犬は踏んづけた。
まだ誰にも穿かれてないのに、二十回穿かれたパンツより、やつれていた。
パンツは疲れて旅に出たつもりなのだろう。
旅するパンツを犬は踏んづけた。
2007年4月19日木曜日
四月十九日 眠れない夜
猫があちこちで鳴いていて寝つきが悪い。春の彼らの声は人間くさくて、わかっていても驚いてしまう。
ウサギはもっと過敏になっているようだ。毛を逆立てソワソワしていた。
「気になるのか?外に行けばいいじゃないか」
ウサギはいつも勝手にうちに出入りしているのに、こんな時に限って自分から出ていかない。
ウサギは一目散に飛び出していった。
これで眠れる。
ウサギはもっと過敏になっているようだ。毛を逆立てソワソワしていた。
「気になるのか?外に行けばいいじゃないか」
ウサギはいつも勝手にうちに出入りしているのに、こんな時に限って自分から出ていかない。
ウサギは一目散に飛び出していった。
これで眠れる。
四月十八日 雑誌に後悔する
雑誌をまるまる一冊ほとんど立ち読みをする。
とても満足、得をした気分になったけれど、家に帰ったらウサギが同じ雑誌を悠々と読んでいた。
特集は「落ちこぼれの子猫に似合う愛され弁当占い」
私はなんて下らない雑誌を読んでいたのだろう。
とても満足、得をした気分になったけれど、家に帰ったらウサギが同じ雑誌を悠々と読んでいた。
特集は「落ちこぼれの子猫に似合う愛され弁当占い」
私はなんて下らない雑誌を読んでいたのだろう。
2007年4月17日火曜日
四月十七日 神妙な佇まいで待つ
焼香の順番を待っているような風情で立っているおじさんがいた。
ここは駅のホーム。おじさんが待っているのは、電車だ。お焼香ではない。
おじさんのカバンのファスナーには、金色のウサギのキーホルダーがついていた。
なんとなく、納得した。
ここは駅のホーム。おじさんが待っているのは、電車だ。お焼香ではない。
おじさんのカバンのファスナーには、金色のウサギのキーホルダーがついていた。
なんとなく、納得した。
2007年4月16日月曜日
2007年4月15日日曜日
四月十五日 便所騒動
トイレが壊れた。朝起きたら、水が吹き出していて噴水のようになっていた。
「いやぁ! きれいだねぇ」と言ったらウサギに「何を呑気なことを」と怒られた。
そうか、朝起きたばかりなのに、用が足せないじゃないか。
でもまあ、野小便に最適な場所はウサギがよく知っているから困らなかったけど。
「いやぁ! きれいだねぇ」と言ったらウサギに「何を呑気なことを」と怒られた。
そうか、朝起きたばかりなのに、用が足せないじゃないか。
でもまあ、野小便に最適な場所はウサギがよく知っているから困らなかったけど。
2007年4月14日土曜日
血の値段
「あたしの血は高いよ!」
往来の真ん中で女が叫ぶ。
青白く骨張った身体。長く黒い髪だけがやけに艶やかである。
「あたしの血を一滴飲めば、精力絶倫!ねぇ、どうだい?お兄さん、買っておくれよ」
通りかかった若者に品を作って見せる。女の足元にはすでに赤黒い染みが広がりつつあった。
「あたしの血を二滴飲めば、無病息災」
「あたしの血を三滴飲めば不老長寿。ほら、おばあさん、あっという間に若返るよ!」
口上が進むにつれ女の足元は血溜まりは大きくなっていく。年寄りがニタニタと女の股ぐらを覗き込む。
「あたしの血を四滴飲めば、不老不死。さあ、じじい!覗くんなら買いな!」
ますます顔は青白く、髪は豊かに輝く。
「あたしの血を十滴飲むと、ほら!」
女は己の血の海に沈み、溺れた。
往来の真ん中で女が叫ぶ。
青白く骨張った身体。長く黒い髪だけがやけに艶やかである。
「あたしの血を一滴飲めば、精力絶倫!ねぇ、どうだい?お兄さん、買っておくれよ」
通りかかった若者に品を作って見せる。女の足元にはすでに赤黒い染みが広がりつつあった。
「あたしの血を二滴飲めば、無病息災」
「あたしの血を三滴飲めば不老長寿。ほら、おばあさん、あっという間に若返るよ!」
口上が進むにつれ女の足元は血溜まりは大きくなっていく。年寄りがニタニタと女の股ぐらを覗き込む。
「あたしの血を四滴飲めば、不老不死。さあ、じじい!覗くんなら買いな!」
ますます顔は青白く、髪は豊かに輝く。
「あたしの血を十滴飲むと、ほら!」
女は己の血の海に沈み、溺れた。
2007年4月12日木曜日
四月十二日 スマイル頂戴
ムスっと不貞腐れた子をあの手この手で笑わせてみる。
お嬢ちゃん、ちょっとでいいから笑顔を見せて、と念じながら。
ほら、素敵な笑顔じゃないか。
でも、お嬢ちゃんを笑わせたのは、わたしではなくウサギだった。
ウサギがしっぽでくすぐったのだ。まったく年頃のお嬢ちゃんに破廉恥なことしやがって。
今度はわたしが不貞腐れる番だ。ウサギを怒りたいやら感謝したいやら。
お嬢ちゃん、ちょっとでいいから笑顔を見せて、と念じながら。
ほら、素敵な笑顔じゃないか。
でも、お嬢ちゃんを笑わせたのは、わたしではなくウサギだった。
ウサギがしっぽでくすぐったのだ。まったく年頃のお嬢ちゃんに破廉恥なことしやがって。
今度はわたしが不貞腐れる番だ。ウサギを怒りたいやら感謝したいやら。
2007年4月10日火曜日
悪魔の精子
悪魔の精子を手に入れた。宅配で届いたそれは幾重にも包まれ、保冷剤で冷たくなっていた。
瓶に入った精液は紫がかり、いかにも悪魔色をしているのが可笑しい。
悪魔とはインターネットで知り合った。「あなたの子供が欲しい」とメッセージを送ると、裸の写真を送れと返事がきた。会って交合することはできないが精液を送ることはできる、そのために裸の写真が必要だ、と。
私は考え得る限り煽情的なポーズで写真を取った。果たしてこんな姿で悪魔の欲情を呼ぶことができるのか、不安ではあったが他に術がない。悪魔から「よくできた」とメールが来たときには、我ながら驚くほど胸がいっぱいになった。
私も悪魔の精子を受け入れる仕度をしなければならない。一体どうすればと思っていたが、悪魔の答えは至極簡単だった。「注射器を使え」というのである。
用意しておいたのは極太の硝子でできた注射器だ。針は付けていない。ここに紫の精液を注ぎ終えると、瓶にわずかに残ったそれを指で掬い舐めてみた。予想に反した甘さに、うっとりとする。
私は自らの手で身体を昂ぶらせると硝子の注射器を挿入した。ピストンを押し込み、精液を送り出す。まだ冷たかった精子だが、胎内に放たれると一気に暴れた。私の身体はその刺激に強く収縮し、硝子の注射器を砕いた。
破片は身体の内外を次々と傷付ける。膣を切り裂き、内腿に刺さり、子宮に埋まった。なおも精子の勢いは衰えず、私は歓喜の声を上げ続ける。
瓶に入った精液は紫がかり、いかにも悪魔色をしているのが可笑しい。
悪魔とはインターネットで知り合った。「あなたの子供が欲しい」とメッセージを送ると、裸の写真を送れと返事がきた。会って交合することはできないが精液を送ることはできる、そのために裸の写真が必要だ、と。
私は考え得る限り煽情的なポーズで写真を取った。果たしてこんな姿で悪魔の欲情を呼ぶことができるのか、不安ではあったが他に術がない。悪魔から「よくできた」とメールが来たときには、我ながら驚くほど胸がいっぱいになった。
私も悪魔の精子を受け入れる仕度をしなければならない。一体どうすればと思っていたが、悪魔の答えは至極簡単だった。「注射器を使え」というのである。
用意しておいたのは極太の硝子でできた注射器だ。針は付けていない。ここに紫の精液を注ぎ終えると、瓶にわずかに残ったそれを指で掬い舐めてみた。予想に反した甘さに、うっとりとする。
私は自らの手で身体を昂ぶらせると硝子の注射器を挿入した。ピストンを押し込み、精液を送り出す。まだ冷たかった精子だが、胎内に放たれると一気に暴れた。私の身体はその刺激に強く収縮し、硝子の注射器を砕いた。
破片は身体の内外を次々と傷付ける。膣を切り裂き、内腿に刺さり、子宮に埋まった。なおも精子の勢いは衰えず、私は歓喜の声を上げ続ける。
四月十日 春のお稽古
ウサギがウグイスに指導している。
ホーホケキョケキョ♪
「最後のケキョ、は余計だ」
ホーホケキョケ
「まだ多い。ケはいらない」
ホーホケッキョ
「ちょっとリズムが狂ったな」
巧く鳴けないウグイスもまた、かわいらしい春なのに。
まったくウサギは余計なことをする。
ホーホケキョケキョ♪
「最後のケキョ、は余計だ」
ホーホケキョケ
「まだ多い。ケはいらない」
ホーホケッキョ
「ちょっとリズムが狂ったな」
巧く鳴けないウグイスもまた、かわいらしい春なのに。
まったくウサギは余計なことをする。
2007年4月9日月曜日
2007年4月8日日曜日
九月二十六日 置き薬
薬屋は黒いスーツにジェラルミンケースを持ってやってきた。
薬箱の前でジェラルミンケースを開けると、薬が飛びかいだした。大道芸のようだ。風邪薬は軽やかに、胃薬は高く、湿布はひらひらと、包帯は回転しながら、飛んだ。
すっかり薬の整った薬箱は、何事もなかったように蓋が閉じられ、ジェラルミンケースも静かになった。
金を支払うと、薬屋は深々とお辞儀をして、帰っていった。
薬箱の前でジェラルミンケースを開けると、薬が飛びかいだした。大道芸のようだ。風邪薬は軽やかに、胃薬は高く、湿布はひらひらと、包帯は回転しながら、飛んだ。
すっかり薬の整った薬箱は、何事もなかったように蓋が閉じられ、ジェラルミンケースも静かになった。
金を支払うと、薬屋は深々とお辞儀をして、帰っていった。
九月二十二日 犬のしっぽ
犬のしっぽが、身体中を撫でる。それはとても気持ちよいのだけれど、お風呂で見たらばしっぽが触れたところに、犬の毛が生えていた。不気味過ぎる上に、ウサギが怯えて泡を吹いてしまった。
2007年4月7日土曜日
2007年4月6日金曜日
2007年4月5日木曜日
四月五日 行方不明の温泉
標識や看板に従って、車は走っていた。地図もちゃんと確認してあった。
なのに、その温泉施設は見つからなかった。
どこに旅行中なのだろうか、その温泉は。
留守なら留守と札くらい立てておいて欲しい。
なのに、その温泉施設は見つからなかった。
どこに旅行中なのだろうか、その温泉は。
留守なら留守と札くらい立てておいて欲しい。
2007年4月4日水曜日
2007年4月3日火曜日
2007年4月2日月曜日
四月一日 筍の山椒摘み
筍がノコノコやってきて、「おじゃまします」と言うなり庭におりて山椒の葉をむしり始めた。
鴨が葱を背負って訪ねてくるのとどちらがすごいだろう?と考えながら、筍を捕まえるタイミングを見計らっていた。
鴨が葱を背負って訪ねてくるのとどちらがすごいだろう?と考えながら、筍を捕まえるタイミングを見計らっていた。
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