僕たちは貧乏だったから、ボール遊びの時には、眼球をよく使った。
僕の眼球は小さかったので、手や板っ切れを使ってピンポンをした。
キャッチボールにはヨシオの左目が重宝した。
サッカーをしたい時には、アキラの眼球を使った。
アキラはとても嫌がったけれども、頼み込んで右目を借りた。
右目を外してがらんどうになったアキラの大きな眼窩をそこにいるべき眼球を胸に抱えながら覗くと、僕はいつも小便がしたくなった。
慌て茂みを探して、アキラの眼球を傍らに置いて、その視線を感じながら立ち小便をした。
外した眼球が見る風景は、アキラには見えない。
でもそれは、紛れも無くアキラの視線だった。
小便を終えた僕は、わざと勢いよく眼球を蹴った。
今も時々、眼球を外してみる。
ピンポンをした跡が微かに残っている。
アキラの眼球にも、僕の足跡がまだ付いているのだろうか。