2006年3月12日日曜日

不完全燃焼

男は、マッチを山に植える。
マッチが十年かけて二十メートルの高さにまで育つころ、木の先端はいよいよ赤く膨らみ、その時を待つ。
風でしなり、側の木と触れ合った時、或いは火の粉を浴びて
マッチの木は一気に炎の葉を繁らせる。
素裸の男は風に揺らめく赤い葉を見上げる。
急激に葉の勢いが衰え、表情を曇らせた男は、途端に息が荒くなる。
もうずいぶん前から酸素が足りないのだ。本来なら、男は倒れていなければならない。