懸恋-keren-
超短編
2004年4月18日日曜日
と
友達の乏しい年老いた虎は空飛ぶトナカイにときめいた。
吐息混じりにトナカイに問う。
「時にトナカイや、この虎の富とトナカイのトキメキを取り交わすことは可能といえるかね?」
トナカイは虎の遠吠えに戸惑い、空高く飛び去る。虎の心は届かない。
トナカイが姿が遠くなってもなおも虎は問い続ける。
とっくに虎はトナカイの虜だったわけだ。
虎は東西南北トナカイを追い掛けて止まることはなかった。
とうとうトナカイは故郷に到着した。虎は凍死した。
トナカイは言う。
「この唐変木が」
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