超短編
九月某日、曇時々雨。ブローチを失くした。二十年前か或いはもっと昔に貰った一番気に入っていたブローチ。どこか誰かの銀細工の作品だった。ないと気付いた時、意外にも悲しくなかった。ただただ針が付いた危険なものを落したことが気掛かりだ。悲しくない自分が悲しい。写真を撮っておけばよかった。