超短編
ここはあまりにも透明で、呼吸を忘れるほどに美しい。そうだ、忘れたのではない。ここは水中なのだ。デクレシェンド。酸素を探しながら、そっと息を吸う。私は魚になってしまったのかしら。いいえ、だってこうして大勢の観客を前にピアノを弾いているもの。私の音色は水に溶け、遠く遠くへ泳いでいく。