その人はいつも同じ巾着袋を持っている。巾着袋は何が入っているのか、いつも膨らんでいて、妙に重たそうだった。何が入っているのか気になるが、人の荷物を詮索するのも憚られ、聞いたことはなかった。今日は、その巾着袋が萎んでいる。本人も元気がないように見える。思わず口を開く。
「何が入っているんですか?」
紐が緩み、開いた袋から見えたのは、完全な闇だった。吸い込まれると気づいた時には、もう闇の中。
2022年8月30日火曜日
2022年8月28日日曜日
2022年8月27日土曜日
2022年8月24日水曜日
2022年8月21日日曜日
2022年8月15日月曜日
#8月の星々 「遊」投稿作
向こうから歩いてくるおじさんの顔にモザイクが掛かっている。服装や髪、歩き方で初老の男性とわかる。そういえば私も今朝、初めて顔にモザイクを掛けたのだった。一番弱く。 個人情報保護も極まれり。今日から顔のモザイクは合法になった。公園で遊具にしがみつく子らの顔は、目鼻も判別できない。
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予選通過
2022年8月13日土曜日
①日記帳 ②宿雨 ③ひらく
日記帳をひらくと紙が湿っている。万年筆では滲むに違いないので今日も油性ボールペンで記す。「8月13日 雨。もう二晩降り続いている。宿雨とはいうが、雨の連泊は遠慮いただきたい。予約のお客様、四組キャンセル……連泊中の雨に宿泊費を払ってもらいたいくらいだが、どこに請求すればよいものか」
Twitter企画
#深夜の真剣140字60分一本勝負
@140onewrite さま
2022年8月11日木曜日
2022年8月7日日曜日
2022年8月6日土曜日
#8月の星々 「遊」投稿作
朝起きると飼い猫が小さい虎になっていた。早朝、餌をねだる声が低く聞こえたのは気のせいではなかった。虎と呼ぶには小さいが、猫と呼ぶのは憚られる、がっしりと太い脚。牙も大きい。猫は柄も性格も変わらず、遊び盛りのまま小虎になった。餌の量は十倍になったがエノコログサと毛玉ボールに夢中だ。
2022年8月1日月曜日
#8月の星々 「遊」投稿作
世界各地から届くおじさんからの手紙には、いつもヘンなハンコが捺してあった。 「何でハンコ捺すの?」 ――遊印。かっこいいだろ? 「なんて書いてあるの?」 ――大人になったら読めるようになるよ。 既に叔父の年齢を越えた。「秉燭夜遊」の通りに叔父は生きた。青田石を握ってみる。重く冷たい。
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予選通過
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