小さな人は、迷いなく崩れ落ちそうな建物の下を這って行く。
「ちょっと待って」
声を掛けると、一瞬止まって振り向いたが、すぐにそのまま進んでしまった。
付き添いの二足歩行の人を探したが、見当たらない。
ぐずぐずしていると置いて行かれてしまう。何しろ小さい人の匍匐は速いのだ。
地震や大風や体当たりする人などがいないことを願いながら、浮いた建物の下に入った。
30インチくらいは浮いているようで、狭いが匍匐はできる。
四方が開けているとはいえ、少し暗い。上を見上げてみるが、よくわからなかった。
この天井が古いレンガ造りの建物の底だと知らずにいられたら、よかったのに。
前を行く赤ん坊が、不意に消えた。
「おい!」と叫ぶと、赤ん坊と、付き添いの二足歩行者が、地面から顔を出した。
「ここからは、足を付けて歩けますよ、地下ですから」
浮いた建物の下の地面にぽっかりと階段に続く穴が開いているのだった。
そういえば、青銅色の街でも、地下に案内されたことがあったと思い出しながら、階段を降りる。