足だけではないのだ。
街灯も、街路樹も、車も、建物も。何もかもが、3インチくらい、浮いていた。
思い切って、そのまま立ち上がった。浮くというのは、生まれて初めての経験だ。
ふわふわしているのとも違う。それよりも……風船の上に立っていると言ったほうが、近いかもしれない。
宇宙や宇宙船の中は無重力というが、おそらく、それとも違うだろうと思う。
赤い鳥も肩から浮いているが、特に気にしている様子はない。
足の感触と周りの景色に慣れようと、足踏みしたり、あたりを見回したりしているうちに、気球はいなくなっていた。
ゆっくりと歩き出した。なんとも心許ない。
!!
何が起きた理解する前に赤い鳥が叫んだ。
「こちらに御座します、消えず見えずインクの旅券を持つ旅のお方を介抱する者はおらぬか!」