2018年5月6日日曜日

箱を開けると 4

 強い風の吹く夕方だ。
 どんどん薄暗くなっていく駅前で、白い箱が風に吹かれて空中に踊っていた。
 風に乗って電信柱にぶつかり、屋根に落ちて転がり、ふいに浮き上がり、また落ちかける。
 空飛ぶ箱に気が付く人がひとり、またひとりと増え、駅前には髪をなびかせながら箱をポカンと見上げている人でいっぱいになった。
 ついに、オレンジ色の街灯に勢いよくぶつかって(それは風のせいではなく、意志があるようにさえ見えた)、箱は開いた。
 スーツの男に降り注ぐ紙吹雪と、「おめでとう」の垂れ幕。駅前で起こる、拍手喝采。「おめでとう」の理由はわからないままに。