2018年5月15日火曜日

箱を開けると6

 箱を開けると、手紙が入っているはずだった。出せなかったラブレターが二十四通。仕舞いこんだまま、十年が過ぎた。もう、潮時だ。破いて捨ててしまおう。私はあのころには想像していなかったような生活をしていて、おそらく相手も同じだろう。たとえ出会っても、二人の人生は交わることはないのだ。
 箱の中には自分のものではない筆跡の手紙が入っていた。若かったあのころ、欲しくて欲しくて堪らなかった、彼女からの手紙だと気が付くまで、何秒掛ったのか、何分掛ったのか、自分でもわからない。切手は貼られておらず、開封もしていない。この手紙もまた、出さなかったはずの手紙なのかーー
 私が出さなかったはずのラブレターが、彼女の元にあるとしたら