朝から読書する場所を求めてコーヒーショップに入った。頼んだのはハーブティーだけれど、ここはコーヒーショップだ。
この時間、読書するために来る人は多いようで、先客の多くも文庫本を広げていた。私も同じようにする。
一組だけ、おしゃべりをしている客がいた。そのうちの一人の声がやけに店内に響き、本を読む客たちは、少し迷惑そうである。
その人の声は、だんだん大きくなり、なにやら機械的になり、とうとう、ひび割れるほど大きくなった。
極力、その人のことを見ないようにしていたが、堪らなくなり、顔を向けた。拡声器だった。
客足が途絶えた隙に、店員が拡声器に近づく。「恐れ入りますが、お客さま」
店員が、プチン。と拡声器のスイッチを切った。店内に静けさが戻る。本をめくる音がする。